長谷川正徳のちょっといい話

第11話 病は気から

病は気から 挿絵

 たとえそれが体の病であっても、心の影響をうけないものはなく、心のもつれの方を正しく処理することが決定的な意味を持つ場合が思いのほか多い。
それを科学的な立場から実証しているのが、最近の身体精神医学である。

 私の知人の三十八歳になるその主婦は、四年ほど前から痙攣性の腹痛と便秘を訴え、近くの医師に診てもらっていたが治らない。
本人はてっきり胃癌に違いないと思い込み、暗澹たる毎日を送っていた。

 私はある国立大学医学部の心療内科で診てもらうようすすめた。
心療内科で診察の結果、彼女の腹痛は姑さんとのいざこざの度にひどくなることがわかった。
そこで医師はレントゲンの検査をしながら、姑さんとのいざこざについての「ストレス面接」をおこなった。
ストレス面接というのは、患者を催眠状態にして、本人の日常のさまざまな感情、この場合、姑さんとのいざこざの感情を起こさせ、その時の胃腸の機能を検査するという方法。
 それを行った所、大腸のほうぼうが細くなったり、切れたようになったりした。
これは大腸痙攣によるものであって、そのために痛み、便秘するというわけであった。
つまり、この主婦は姑と平和に日々を暮らす知恵を持たねばらならぬのであり、それ以来私の法座に来て仏の道を聴き、信仰に励むようになっている。

「断腸の思い」というが、そういう心がまさしく大腸を細くして便秘をもたらすのである。
仏教で、心身一如とか色心不二とかいうが、まさに現代の科学がそれの真理性を裏づけている。

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