長谷川正徳のちょっといい話

第12話 人間みな平等

人間みな平等 挿絵

 人間は決して人間を差別してはならない。
釈尊は当時のインドのバラモンを頂点とするクシャトリヤ、ヴァイシヤ、シュードラの四つの階級差別社会(カースト社会)をするどく批判され、

「四姓は平等であり、尊卑上下の差別などない」

と説かれた。

 今日、人権ということがやかましくいわれるが、釈尊の一切衆生悉有仏性(すべてのものはみなほとけ)はまさしく、この人権思想の一番深いところにあって、人権をほんとうに支えてゆく宗教と申すべきであろう。

 ところが、われわれはまったく気付かないうちに、人間や職業などを差別してしまう場合がしばしばある。

 ある新聞記事に、母一人子一人の家庭でその母親をほめる記事が出ていた。

「○○さんの息子は優秀な成績で大学を出て一流会社に就職した。○○さんはその息子を女の細腕一本でビルの便所掃除までして、育て上げた」

という内容の美談であった。
多くの読者は、

「立派な母親だ」

と受け取ってこの記事を読み過ごしたが、一人の読者から、

「私はビルの便所掃除をふくむ清掃業務にしたがっているが、この“便所掃除までして”というのはどういう意味か。私は立派な仕事だと思っている」

といった投書が届けられた。
 この投書で言っていることが本当であることはいうまでもない。
○○さんの立派さを強調するのに、清掃という仕事を何かいやしいものと差別する職業差別に知らず知らずに陥ってしまっているのである。

人間平等、職業に上や下、尊い仕事、卑しい仕事の差別はないことを、よくよく心しなければならない。

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