長谷川正徳のちょっといい話

第22話 感謝の原理

感謝の原理 挿絵

 日本医学界に大きな足跡をのこされた杉靖三郎先生がカナダヘゆかれたとき、ストレス学説で有名なハンス・セリエ博士を訪問されたそうです。
 杉先生はセりエ博士に、

 「現代人をストレスから救う良い方法はないでしょうか」

と質問されたところ、同博士は、

 「その原理は、東洋にありますよ。
それはプリンシプル・オブ・グラティテュード(感謝の原理)です。」

と答えられたそうです。

 杉靖三郎先生の書かれた本でこのことを読んだとき、なるほどと感心するとともに、ノーベル賞受賞の世界的生理学者が東洋の精神世界の原理にまで通じておられることに驚いた次第です。

 日本文化のなかに「恩」の精神が昔からありました。
しかし、現代の人びとは、恩や感謝などといった感覚はだんだん失われていっているようです。
このようなところに、日本人も欧米人なみに、ストレス病に悩まされることになった大きな原因があるように思われます。

現代人は何でも人間の力でできると思っています。
 ところがそうではないのです。

 夜眠るということ一つでも、わが力ではありません。
 自分の力で眠られるものなら、眠れぬ夜などあるはずかありません。
眠るということさえわが力ではありません。

自分の力で得たのでないものを "恵まれたもの" といいます。
"おかげさまによるもの" ともいいます。
朝起きることだって、おかげさまなのです。
昨夜眠るときに、必ず明日も生きて目をさますという保証を手にして寝たわけではありません。

 わが命のすべては、大きな恩寵によるものなのであります。

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