長谷川正徳のちょっといい話

第25話 心を育てなければ体はついていかない

心を育てなければ体はついていかない 挿絵

 生まれたばかりの赤ちゃんは実によく泣きます。
産声に始まる赤ちゃんの泣き声は、不快の表現であると言われています。

 完全に保護されていた胎内から出てきて、音、光、においなど、あらゆる外界の刺激に対応しなければならないのです。赤ちゃんにとっては、とまどいを感じることばかりです。
それが、原始的な形で泣き声になってあらわれます。

 だが一ヶ月もたつと早くも心の働きが見られます。
あやしてくれる人にはほほえんだり、泣き止んだりします。
そして六ヶ月頃になると一番愛撫してくれる母親にははっきり笑うようになります。
その時には真正面から、はっきりほほえみかけてやらねばなりません。

 心のふれあいが、まだなにもわからぬ赤ちゃんにも非常に大切なのです。
豊かな心の発達があって、はじめて知恵も体もすくすくと育ってゆくのです。

 餌があり、トレーニングがあれば、動物を育てることができます。
けれども人間を育てるには豊かな心を育てることが最も大切だということを忘れてはなりません。
 このことは乳児期から幼児期となり、学校へ入り、思春期を経て一人前の大人になるまで、変わることなく続いていくのです。

 その根本にゆがみができたとき、子供の心にも異常な反応が起こり、やがてそれが、性格や体の異常となってあらわれてくるのです。

 シェイクスピアのことばに、

「感謝することを知らぬ子供を持つことは、蛇の歯よりもいかに恐るべきことか」

とあります。

 よい子を持つために、親自身が、豊かな心を持つべく努めなければなりません。

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