長谷川正徳のちょっといい話

第26話 山川草木悉皆成仏

山川草木悉皆成仏 挿絵

 ある修行僧が草も木も成仏するという話を聞いて、どうしても理解できず、尊敬する学僧に、自分で考えたり修行したりすることのない草や木がどうして成仏するのでしょうかと尋ねた。

 そのとき、学僧は、あなたは草木成仏のことを尋ねられたが、それではあなた自身の成仏のことはもうおわかりかな、と逆に質問してきた。

 修行僧は、はっと気づくところあって、「恐れ入りました。よくわかりました」と御礼を述べて引きさがったという。
 学僧の言ったことが、どうして草木成仏の答えになっているかというと、何も草や木が功徳を積んで仏になるのではなく、草や木を見る人間が仏になるとき、草や木もいっしょに仏になるのであると教えたわけである。

 わたしどもは自身が仏になったとき、天地も山も川も、草木もすべてがまた仏になると知るべきである。

 よく酒は飲んでも酒に飲まれるなと言う。
酒を飲んであばれまわっては、酒も、飲んだ人も、ともに救われない。
酒がストレスを解消し、快い眠りを誘い、明日への活力となってくれる、そういう酒の飲める人はその人自身が仏になっているのである。
飲む人が成仏すれば、飲まれる酒も成仏する。

 維摩経いうお経に「心浄ケレバ土モ亦浄シ」とある。
 そこに住む人達の心が美しいと、自然にその国土もきよらかになってゆく。
自分が仏になることと、妻を仏にすることとは別々ではない。
妻を仏にする道が自分が仏になる道であり、自分が仏になる道が、やがて妻を仏にする道なのである。

これを自他一如、内外一如という。

前の法話
長谷川正徳のちょっといい話 法話一覧に戻る
法話図書館トップに戻る