長谷川正徳のちょっといい話

第27話 身体と心は分けられない

身体と心は分けられない 挿絵

 「健全なる精神は、健全なる身体に宿る」

 これはローマの詩人ユベナリスの言葉を翻訳したものであることは誰もが知るところであるが、詩人ユベナリスの本来の意味は、実は、

 「我は欲す、健康なる精神を健康なる身体に」

という願いの言葉だったのである。
だから、体を健康にしさえすれば、心も健康になるという意味ではない。

 健康な精神を得るためには、健康な体がなければならないし、健康な体のためには、健康な精神が必要であるということで、つまりは体と心がともに健康であることこそが、本当の健康といえるわけである。ユベナリスの詩の言っている意味はそういうことなのである。

 “心と体はわけられない”ということが仏教の一番大事な原理であって、これを“色心不二”とか“物心一如”とか言っている。

 昔から「病は気から」と言っているが、近頃は“気のせい”で起こる病気が多くなって、これを治すには“心”から治してゆく必要があるわけで、何処の病院にも「心療内科」があって文字通り“心”の治療に当たっている。
 また病気の成り立ちを考えるにも、体のことだけではわからないものが多くなって、心と体のつながりから診療する「精神身体医学」(サイコソマチックス)という分野が盛んになってきている。

 ストレス学説を提唱したセリエ博士は、「感謝の哲学」という言葉を使い、日常生活のなかに、感謝、報恩という心情を持つことが自身をストレスから守り、健康を保つための秘訣であると言っている。

これを“自他一如”、“内外一如”という。

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