長谷川正徳のちょっといい話

第32話 親孝行のすすめ

親孝行のすすめ 挿絵

 百歳を超えたきんさん、ぎんさんが、このところマスコミに引っ張りダコで、アメり力のテレビにも紹介され、国際的に有名な“双子ばあさん”ということになっている。

 百歳を超えるお年寄りはこれからも増え続け、2025年には2万人近くになるだろうといわれている。
日本人がみんな長生きになるのはいいのだが、その反面で心配なのは赤ちゃんの出生率がひどく低下していることである。
一人の女性が産む子供の数はいま一人半。
ということは、つまり日本の人口は、先ゆきどんどん減少してゆくということである。

 このままゆけば、年齢層別人口構成比はピラミッド型からタマゴ型、さらに逆三角形になってしまう。
そうなったとき、一体、高齢者福祉はどうなってしまうのか。
厚生年金のもらい手のほうが、所得のなかから掛け金を出す人たちより多くなる。
つまり、働ける年齢層の人たちがみんなでお年寄りの面倒をみるという、今の仕組みが成り立たなくなってしまうということである。

 「親孝行したいときには親はなし」

とは昔の話。
いまは、

 「親孝行したくないのに親はいる」

などと陰で言われる時代になっている。

 公の福祉行政に期待できず、さりとて民間のボランティア・サービスにも限界があるとすれば、やはり昔ながらの年老いた親の面倒は子がみるという、古来からの基本的スタイルの見直しと再構築をはかるしかない。

子が親を思い、親につくすのは自然の情の発露ではあるが、やはり徳目として親孝行は説かれねばならない。

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