長谷川正徳のちょっといい話

第35話 冷静で秩序ある報道を

冷静で秩序ある報道を 挿絵

 愛知県西尾市の中部中学2年の生徒がいじめを苦にして自殺した事件の後、全国各地で中学生、小学生の自殺が相次いだ。
 事件に関する連日の報道が他の子供たちの自殺に何らかの影響を与えたのではないかと思われてならない。
現にある専門家は、この状況は明らかに「群発自殺」と呼ぶべきものであって、1つの連鎖反応的な現象であると指摘している。

 西尾市の中学生の場合、遺書の全文が各新聞に一斉に載った。
衝撃的な内容が引き金になって、すべての報道機関は極めて無秩序に、より扇動的に報道を繰り返した。
 アナウンサーのうわずった語り口、ヒステリックな口調など、連日のワイドショーの報道の仕方は、子供たちの心の不安を増幅させたに違いない。

 この種の事件の報道は冷静で穏やかであってほしい。
子供の自殺のどこに問題が潜み、それにはどのような対策をとるべきかの勝れた知恵を集めた報道であってほしい。
 ある中学の先生が語っている。
「いじめる側の子どもたちは、その行動をいじめと考えていないように思われる。
落書きしたり、物を隠したり、仲間はずれにしたり、それらを遊びの感覚でやっていはしないか」
と。
 そうだとすると、こんな陰湿な遊びをどうして子供はしてしまうのか。
静かに根本的に大人は考えねばならない。
さわがしいのぞき見的な番組構成にしないで、秩序ある取材と冷静な報道を望むものである。

仏教では禅定といって、事が起きたときにはまず落ち着けと教えている。

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