長谷川正徳のちょっといい話

第42話 悪魔ちゃんは絶対いけない

悪魔ちゃんは絶対いけない 挿絵

 たいていの事には驚かなくなったわれわれだが、わが子に「悪魔」と名付けた親の出現にはいささか驚かされた。
命名の正当性については、東京家裁八王子支部が結論を出したが、この命名の当否をめぐって議論がおこった。

 私の名前、正徳(しょうとく)は小学校までは「マサノリ」と呼んだ。
中学に入って、僧名(坊さんの名前)で呼んで「ショウトク」といった。
ところで名古屋周辺では、「非常に」とか「多分に」とかいうのを「しょうとく」という方言があった。
何かにつけていたずら好きだった私は、「しょうとく困った奴だ」と先生や友達にこづかれた。
その度に私は

「何をいう、俺はしょうとく太子だぞ」

と言い返した。

 14、15歳は多感だ。
私は自分の名前に随分こだわったことを忘れていない。

 親の命名権は前近代的発想と、札幌高検の佐藤道夫検事長は次のように申されている。

「生まれたばかりの乳飲み子であっても、人は人、人格権の備わった権利主体である。
他人が正当な理由なしに、人を〔悪魔〕〔馬鹿〕〔泥棒〕呼ばわりすれば、刑法の侮辱罪、ときには名誉毀損罪が成立する。
それは親であっても同じこと」

 この父親は子供の知名度を高めてやりたいといっているが、とんでもないこと。
この子が将来、差別を受け、こころを病むであろうことは100%間違いない。

 子供は仏さまからのさずかりもの、仏の子なのである。
人間礼拝が仏教のかなめという点からも「悪魔」の命名は絶対に誤りである。

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