長谷川正徳のちょっといい話

第47話 小欲知足と現代文明

小欲知足と現代文明 挿絵

 仏教の大切な教えの一つに「小欲知足」というのがある。
あまり欲ばらないで、満足することを知れというのである。
今日、これをいうと笑ってしまう人が多い。
物を生産し、物を豊かに消費することが幸せという人生観がはびこってしまった証拠である。
しかし、日ごと、マスコミで報ぜられる地球温暖化現象一つを真面目に考えるだけでも、もはや消費文化に幸福を見出すという考え方は成り立たないとはっきり知ることができる。

 このまま、地球の温暖化、オゾン層の破壊を続けてゆけば、近い将来、地球的規模で洪水、渇水、暴風雨などの自然災害がおこり、食料不足、居住地の放棄など人類は大変な事態に追い込まれるであろうとIPCC(気候変動に関する政府間パネル)は警告する。

 現代文明は生産を中心に考える文明であるが、その考え方の基準に自然征服は善であるという考え方である。
このような考え方が、人類の欲望の全面解放を善とみる思想を生み出した。
いま、われわれにとって最も重要なことは、このような科学技術文明の根幹の思想にメスを加えなければならぬということである。

 欲望というものは、満たせば必ず次の欲望を生む。
釈尊はこれが迷いの人間の変わることのない在り方だと指摘された。
この果てし無い欲望をどうやって自身でうまく決着をつけてゆくか。
これは科学や技術で解決できない問題ではない。

 釈尊は欲望を満たすのがいけないとは申されていない。
欲望というものは、絶えず危険性を伴うものであることを知り、その制御を学びなさいといっているのである。

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