長谷川正徳のちょっといい話

第52話 現代の文明に安全の哲学を

現代の文明に安全の哲学を 挿絵

 先日(※1993年4月18日)、岩手県花巻空港で日本エアシステムの飛行機が着陸に失敗し炎上した。
間一髪で最悪の事態は免れたが、検証の結果、副操縦士の操縦ミスによるものだという。
名古屋近在の農協のツアー一行が乗っていて、その中の知人に見舞いの電話をかけたところ、花巻のホテルで一泊、もう観光どころではない、すぐ新幹線で引き返して帰りました。家の敷居をまたいではじめてやれやれ生きて戻ったとの実感が湧きました。
激しい怒りのなかにも無事帰ることができた喜びがうかがえる声だった。

 3月のダイヤ改正で、東京−博多間に乗り入れた新幹線「のぞみ」がトラブル続出にあえいでいる。
対応できる初期故障なのか、二次災害の心配される構造的欠陥なのではないか。不安も加速している昨今である。
もはやわれわれは今日、科学技術文明の埒外にあって生きることはできまい。
そこでこういう技術文明の時代に一番重要なのは「安全の哲学」をみんなが持つということなのではないか。
そんなことは滅多にないというが、滅多にないということはたまにはあるということであり、そのたまにあることが科学技術時代には大変なことになるのだ。

 この度の花巻空港飛行機事故はあらためてわれわれによもや、まさか、に腰をおろしていてはいけない、万が一、もしや、にもっと敏感であれと教えているのではないか。
生命の絶対性は安全の哲学によって保証されるのである。

※この法話は平成6年に書かれたものです。

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