長谷川正徳のちょっといい話

第62話 地獄、極楽はこの世にあり

地獄、極楽はこの世にあり 挿絵

 私の知人の息子で16歳の男子高校生がこの頃、ある新聞社の社会事業団を通じてユニセフに金50万円を贈った。

 この50万円というのは実は拾った金。昨年夏、彼は通学途中、電車の座席に落ちていたのを駅員に届けた。

 しかし落し主は現れず、所有権は彼に移った。

 彼は言う。
「拾っただけの大金を自分のものにしていいのか。働いたわけでもないのにと考えた末、両親とも相談、もともとなかったお金だし、恵まれない子供たちに募金を呼びかけるテレビ番組を見る度に協力したいと思っていた。でも機会がなくって」
と寄託金50万円を出すときそういいながらひどくはにかんでいたという。

 ここで引き合いに出しては気の毒にも思えるが、金丸被告の場合はどうだろう。

 ある物好きな人の試算によると、金丸さんの33億円余りの所得税隠しで43億も追徴されることになるとか。

 まともな所得税や市民税、県民税の他に重加算税や返滞税がかかるからこうなるそうだ。税金をタダにした報いで、タダより高いものはないことを思い知る羽目になった。さらにもし有罪になった場合は巨額の罰金という追い討ちが待ち構えている。

 昔の清廉な政治家は「井戸・塀」になるといったが、脱税の罰で「井戸・塀」ではなんとも話にならぬ。

 日蓮聖人の言葉に「浄土といい穢土というも土に二つの隔なし只我等が心の善悪によるとみえたり」

 とあるが、やはり地獄も極楽もこの世にあると悟るのが真の仏性である。

※この法話は平成5年にかかれたものです。

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