長谷川正徳のちょっといい話

第69話 長寿ニッポン世界一揺るがず

長寿ニッポン世界一揺るがず 挿絵

 厚生省がまとめた「平成3年簡易生命表」によれば、男性の平均寿命が76.11歳、女性の平均寿命が82.11歳でこれは過去最大を記録するものであり、国際比較においても過去数年、男女とも連続世界一の座を維持しているとのことである。100歳以上の長寿者は本年9月現在で4152人で、調査を始めた昭和38年の153人に比べると30年間に27倍に増えたことになる。

 日本人のこの様な長寿には、食物文化が大きく関わっていると多くの学者は指摘しているが、最近、郡山女子大学の森 一教授(生物学)が面白いデータに基づいて、日本人は精神的なストレスをうまく除いていると説明する。

 森教授は江戸時代の大名、家臣、公家、そして僧侶らの数千人の資料を調査して、階層別の平均死亡年齢を計算した。それによると一番短命なのは大名で48.3歳、家臣、公家は64.7歳、体をあまり動かさず、美食の大名が短命なのは厳しいストレスがあったはずと森教授は言う。逆に一番長寿なのは僧侶で68.6歳。僧侶は修行で心身を鍛え、節制のある生活を送る。精神的なバックボーンを持ち、読経や坐禅でストレスもたまらなかったはず。そういう精神的な伝統が庶民の間にもあって、不安、いらいら、立腹などを巧みに処理していることが長寿につながるのではないかと森教授は言う。

 今や日本もものすごいストレス社会になっている。それだけに、ますますストレスから免れる心の知恵を仏教に求めることが大切である。

※この法話は平成3年に書かれたものです。

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