長谷川正徳のちょっといい話

第70話 “おばあちゃん”のすること

“おばあちゃん”のすること 挿絵

 これはある一家のお話です。夫婦共稼ぎの両親と、中学生のお嬢さん、それにご主人の母親という、ごくふつうの家庭です。

 中学生のチーちゃんは、毎朝、仏壇にお線香を立て手を合わせ、それから朝食をとって学校へ行きます。誰に強制されたわけでもありません。でも、こうなるのには、それなりの理由があったのです。

 チーちゃんはクラブ活動のために、毎朝五時に起きて学校へ行かなければなりませんでした。でもお母さんがお勤めがあって朝は遅いのでチーちゃんを起こして学校へ行かせることなどできません。そこでその役目は主婦業のベテランであるおばあちゃんが代わってくれることになりました。

 おばあちゃんが毎朝四時半に起きてご飯をたき、お弁当をつくってチーちゃんを送り出すことなど、文字通り朝飯前のことでした。

 「ママにはできないことがおばあちゃんはできる。おばあちゃんはえらい人」と、チーちゃんの尊敬はおばあちゃんに集まります。おばあちゃんのすることは良いことなのだと、おばあちゃんのする仏壇のお給仕をするようになったのです。

 おばあちゃんも嫁や息子が見向きもしない仏事の大切さを孫にも伝えることにしました。チーちゃんはおいしいお弁当に感謝を表すために、おばあちゃんの喜ぶ仏壇のお給仕をする。こうしてこの一家の仏さまへのお給仕は孫にチーちゃんに伝えられることになったのです。「朝夕にみ仏おがむよい家庭」にはチーちゃんのようなよい子が育つものです。

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