長谷川正徳のちょっといい話

第77話 生きる金そんなにいらず栗を剥く

生きる金そんなにいらず栗を剥く 挿絵
生きる金そんなにいらず栗を剥く

 この句をいつであったか門前の伝動板に書いた。これは朝日新聞の読者俳句欄に出ていた句である。その時ちょうど通りかかった人がこの句がどうもわからないという。どこがわからないのかと聞いてみると、お金はたんとほしい。お金がそんなにいらないということがわからないと言う。

 なる程そうかもしれない。確かにお金はないよりある方がいい。然らばお金だけあれば幸せかと言うとそうはゆかない。今家中の者が灯の下で輪になって栗を剥いて食べている。みんな健康で家の中もどうやらうまくいっている。不自由なこともそれ程ない。強いていえばもう少しお金があればと思うくらいだ。

 しかしそれよりも家中の者がこうして灯の下で語らいながら栗を剥いて食べている。ここに何ともいえないやすらぎがあり不安がある。考えてみるとこんな姿の中にこそ幸せがあるのではないだろうか。

 「幸せ」。それには「足るを知る」という心がともなわないと感じられるものではないようだ。

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