長谷川正徳のちょっといい話

第79話 オカルトの意味するもの

オカルトの意味するもの 挿絵

 耳慣れないオカルトという外国語が、訳語もなしに、怪奇・異様という語感で受け取られたままに定着した。ひとつには、オカルトという用語のカバーする領域が広範雑多であり、翻訳のしようのないものである。

 エリアーデの引用による『オックスフォード事典』に従えば、「オカルトという用語は1545年に初めて用いられたもので、精神によって理解されないものであり、悟性や通常の知識の範囲を超えたものを意味する」という。その後に、「古代的・中世的と称された諸科学を指し、隠された、神秘的な自然の働きに関する知識、あるいはその利用を含む」と補足されている。呪術・錬金術・占星術・神智学などがそれにあたる。それにしても、オカルトと他の周辺の領域とを明確に区別する一線に完全な了解があるわけではない。最近のオカルトブームの範囲には、秘教的・神秘的傾向を持つ東洋宗教や超心理学など体系的なものから、UFOやアトランティス・ムー大陸に関する雑多な関心までが含まれている。

 超能力にしても、悪霊祓いにしても、オカルト的とされる領域にあるひとつひとつは、我々にとって決してなじみのないものではない。確かに、迷信的・非科学的とされてきた諸現象が、オカルト的という新しい形容を冠することによって人々の関心を喚起し、注目を集めはした。宗教ブームをいわれる現象も進行していた。しかし、最近のブームとしてのオカルトは、作られた、しかもヒッピー族やアングラ族といった若者風俗と同じように輸入された現象という印象を拭いきれない。

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