長谷川正徳のちょっといい話

第83話 素直な心

素直な心 挿絵

 あなたは自分の非を人に注意され、それを素直に認められずに後で恥ずかしい思いをしたという経験はありませんか。

 先日、私がタバコを買いに出かけた時のことです。くわえタバコで歩いていた私は、タバコ屋の前で、何気なくタバコを道に捨てそのまま店に入ろうとしました。

 その時、ふいに「ちょっと」と声をかけられました。振り向くと学生風の青年に「タバコの火くらい、ちゃんと消してください。危ないじゃないですか」と注意されました。

 私は自分の非に気づきましたが、照れくさくなり、火をもみ消しながら「いつもは消しているんですけどね」と言い訳しました。

 青年は「第一、道に捨てたりして、その場所を掃く人のことを考えたことがありますか」とさらに一言。その場は謝り、その帰り道に「こんなことで、なぜそこまで言われなくちゃならないんだ」とか「人のことだ。ほっといてくれ、よけいなお世話だ」といつの間にか、その青年に対して怒りをおぼえていました。

 しかしよく考えてみると、確かにタバコを投げ捨てた自分の行いが悪い。あの青年は、それを注意してくれた人だ。それなのに、なぜ私はその非を素直に認められずに、青年に対して怒りをおぼえたんだろう。

 私は自分が気づかずに犯した非を他人に注意され、恥ずかしさを青年への怒りでごまかそうとしていたのです。

 注意されたことを素直に認める心と認めようとしない心。私たちの心は、その善・悪どちらにも働くものです。

 それならば、やはり「ハイと言う素直な心」。人はこの心を大切にしていきたいものです。

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