長谷川正徳のちょっといい話

第87話 お盆によせて

お盆によせて 挿絵

 お釈迦様のお弟子に目蓮尊者(もくれんそんじゃ)という方がおられました。

 あるとき、今は亡き父母のご恩に報いようと、天国から地獄までお探しになりますと、何とお母様は餓鬼道におちて苦しんでいられたのです。

 目蓮尊者は驚いて、手にしていた食べ物を与えたところ、炎々と火になって燃え上がってしまいました。

 びっくりして、今度は水を食べ物に注いだところ、油をかけたようにいよいよ激しく燃え上がるのでした。

 わが力及ばずとお釈迦様のもとに行って、どうしたら母を救うことができるでしょうかと尋ねました。

 そのとき、お釈迦様は次のように答えられました。

 「お前の母は生前、思いやりがなく、ただ欲だけ深い人だった。
その報いによって餓鬼道に落ちたのである。
これを救うには、母に代わってお前が施しをすることだ。
それもお前の母一人を助けようというのではなく、多くの悪い行いの結果、苦しんでいる人々も同時に救いだそうという慈悲の心をもって、来る7月15日(夏の修業の終わる日)多くの修業にはげんだお坊さんに供養しなさい。
 その功徳によって母ばかりでなく、大勢の人々が救われるのだよ」

 この説話を通して、人間の行為における決断の自由と責任の負荷ということ、真の仏教は愛他的能力の完成を目指すものであるということをお釈迦様は教えているのであります。

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