長谷川正徳のちょっといい話

第93話 心を彼岸に

心を彼岸に 挿絵

 「生死を此岸とし 涅槃を彼岸とす」

 春秋二回の彼岸の季節は、大自然の躍動と静寂を教える最も美しい時期です。

 寒からず暑からず、昼も夜も二分され太陽の運行もまともに東から西へ移りゆく、古人はこれらの自然の運行に身を慎み、行を正して四恩報答の人生を歩みました。

 私達は現代世相の中に在って、物の豊かさにうつつを抜かし、心浮薄に流されて父母師長、ないし祖先の大いなる恩恵を置き忘れていないでしょうか。

 恩を知り恩に報いていくことは人の人たる道、祖先を思わず親を忘れ、大衆に遊離するとき自らの生活が乱されていきます。

 稔りの季節を迎え、此岸の中に執着し煩悩を燃やして飽くことを知らず、生死の苦海にうかうかと漂流することなく、心の扉を精一杯開き、現実の自己をみつめて涅槃常楽の彼岸に到達するよう努力しなくてはなりません。

 暗い生活より明るい生活、迷いの生活より悟りの生活に、愚痴を除き、真実を知り、正しく物事に対処していくことです。

 常に自己の充実を図り、常に全体への奉仕を心がけて日々に精進する時、此岸の世界より彼岸の世界に心を渡すことができます。

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