長谷川正徳のちょっといい話

第95話 心の時代

心の時代 挿絵

 9月15日の敬老の日にちなんで、厚生省は、恒例の全国高齢者名簿を発表した。

 9月30日までに100歳以上となる長寿者は、全国で男 562人、女 2106人の計 2668人で、これは長寿者名簿が初めて発表された昭和38年の100歳以上の長寿者が、わずか153人だったのに対し、25年間で、何と約17倍に増えたことになる。

 62年簡易生命表によれば、日本人の平均寿命は、男 75.61歳、女 81.39歳で、これは世界最高水準に達したものであり、今後とも高齢者の医療体制の整備なども進んで、長寿者増加の傾向はますます上昇カーブを続けてゆくと厚生省は予想している。

 ということは、「いったん生まれると、ほぼ天寿に近いところまで生きられる」ようになってきたということであって、それでは「人は何のために生きるのか」と改めて問われる時代になったということであろう。言葉を変えて言えば「生きがいの問われる時代」、つまり、いうところの「心の時代」に入ったといえよう。

 敬老の日を前後に、決まって毎年のように老人の自殺が報道される。悲しいことだ。生きがいを失った老人を待っているのは孤独と退屈の地獄である。そこへ病苦が忍び込む。そうならないために、老いの来る前に心の準備をなすべきである。晩熟の豊かさ、美しさを目指して、老後第二の人生にスタートできるかどうか、それはいつにかかつて若いときから「心の豊かさ」に生きたかどうかにかかっていると言えよう。

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