長谷川正徳のちょっといい話

第97話 彼岸へのみち

彼岸へのみち 挿絵

 「生死を此岸とし 涅槃を彼岸とし 煩悩を中流となす 菩薩は無想の智慧をもって禅定の舟船に乗り 生死を此岸より涅槃の彼岸に到る 禅定の舟船とは 布施・規律・忍耐・精進・禅定・智慧を指す」

 焼けつくような炎暑も去り、残暑の照りつけもすんで、涼しい風が走り抜けます。

 9月、お彼岸の月です。春秋二回、春分の日・秋分の日を中心に前後の三日間、短い一週間ではありますが、花が咲き実を結ぶ時期でもあります。

 彼岸のお中日が、国民祝祭日の法律の中で「祖先をうやまい、亡き人を偲ぶ」という趣旨でつづられています。彼岸会の行事は日本の気候風土が生んだ美しい宗教行事であり、祖先崇拝の尊い姿でもあります。

 恒に彼岸を求めながら此岸の中に浮沈する人間、彼岸の里は遠くに在るのではなく、お互いの五尺からだの胸の中、心中です。

 私達は禅定の舟船を日々普段の生活の中に守り実践しなくてはなりません。彼岸も此岸も今日の世界です。

 これからは静かな夜が長くなり、月の光も一段と増し、虫の音も澄んでまいります。

 稔の秋を迎えて祖先の力を感じながら、同胞相愛の仏作仏行を営んでいるかを反省しつつ、与えられた生命を精一杯に尽くして、日々これ彼岸の道を歩んでまいりましょう。

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