長谷川正徳のちょっといい話

第98話 彼岸に生きよう

彼岸に生きよう 挿絵

 「生死を此岸となし、涅槃を彼岸となし、煩悩を中流となす。菩薩は無想の智慧をもって禅定の舟船に乗り、生死を此岸より涅槃の彼岸に到る」

 9月、暑さ寒さも彼岸まで、春秋二季の彼岸会は共に季節の変わり目、殊に秋は厳しい暑さから解放されて爽涼の季節に、又、春は寒さから暖かさの楽しみに移ります。

 この機会をとらえ、御先祖さまたちは祖先崇拝を通して、新しく伝来した仏教精神ととけ合い、生活のリズムを正す智慧袋を残してくれました。

 現在の祝日法に春分は「自然をたたえ生物をいつくしむ」とあり、秋分を「祖先をうやまい、なくなった人をしのぶ」としています。

 私達は稔の秋を迎えて大自然の恵みをたたえ、天地の恩に感謝し、先人の偉大な徳を偲んで報恩の誠を捧げなくてはなりません。

 祖先を忘れ親を思わぬ者の生活は乱れます。日々これ此岸の中に浮き沈みするお互いが、与えられた夫々の場を通じて四恩報謝、現前直下の自己をいかに充実していくかを、自ら叱り、自らをみつめ、真実の智慧をともして精進する時、此岸の世界を彼岸に変えていきます。

 生死の苦海を渡す智慧のひをともして、彼岸に生きる生活に精進してまいりましょう。

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