長谷川正徳のちょっといい話

第100話 人間の弱さ

人間の弱さ 挿絵

 「忘れた頃に事故は来る」と耳にしますが、ある会社の社長さんは「事故は忘れた頃に来るのではなく、起こした事故を忘れるから、事故を起こすのである」と戒めております。

 何事もそうであるように、ものごとに慣れることは大切だが、慣れすぎると初心を忘れてしまうのでございます。

 とくに技術の世界における慣れは注意が必要であると言われます。身近な例を挙げれば、自動車の習いたては十二分に注意を重ねて安全運転をしているが、いつしか慣れると安全運転の規制よりはみだし、事故安易な考え方、妥協から思わぬ事故を起こしております。

 徳に現代人の生活機構は複雑微妙であるが故に、何かせわしなさを感じ落ち着いて物事を判断しかねることさえあります。その為か自己の生活態度、環境は勿論、体力、技術等を無視して冒険を試みる人も少なくありません。物事に対しての慣れすぎと不慣れの微妙な心理的交錯のもたらす一面かも知れません。

 こんな時、お互いに要求されてくるのが自己反省と言われます、「失敗した」「悪かった」と反省できる人は信頼されます。慣れによる初心の忘却は自己過信、増上慢となって現れます。謙虚と素直さのある者は自己の行為に責任を持って物事を処理していきます。

 慣れは人間の弱さの一面でもあり、これに溺れることのないよう戒めてまいりましょう。

前の法話
長谷川正徳のちょっといい話 法話一覧に戻る
法話図書館トップに戻る