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第35話  分からないとしておく勇気


挿し絵   とっても切なく、やりきれない内容のメールをいただきました。飲酒運転の青年が起こした事故で14歳のお子さんを亡くされた、お母さんからです。運転していた青年も電柱に衝突して亡くなったそうです。
  事故から1年7カ月。固く、冷たくなった卵のような閉ざされた心に、やっと小さな穴があいて、そこからもれたであろう言葉で綴られています。

  「自分の命を呪いました」とあります。わが子を不条理な死によって亡くす運命……「なぜ?私の息子が…」という疑問に答えてくれる人は、残念ながらいませんものね。辛かったでしょう。そして、「怒りのぶつけ所がなく…」とも。たとえ相手が生きていたとしても、怒りをぶつけることによって、おそらく心が晴れることはなかったでしょう。

  仏教の考え方の中に「わからないことを、わからないとしておく勇気」というのがあります。私はこの考え方はとても大切だと思います。「なぜ私は女に生まれたのか」「なぜこの時代に生まれたのか?」「なぜ、自分の息子が…」このような疑問は「とりあえず、分からん!」としておきましょう。仏教では「問題ごと仏にあずける(お任せする)」ということになるでしょう。
  「わからないけど、こんな時、仏さまならどうするだろう…」なるべくそんなことを考えていければいいなと思います。

  このお母さんは今、飲酒運転撲滅の運動に参加しようとしていらっしゃいます。目には見えないけど、亡くなった息子さんと二人三脚の活動ですね。

  次回は、お題「後悔」を受けて、後悔している人への対応について。後悔している人を追い込むような言い方してませんか?
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