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第55話  ジョークかくあるべし


はやしゆうさんの作品
挿し絵
   はやしゆうさんとの出会いは、ありがたい縁だと思う。デザイン・フェスタで通路を挟んで向こう側にいたのだ。
彼女の作品はご覧の通り。形容の仕方がよく分からない。
オヤジギャグをここまで昇華させれば、作品がメッセージ性を持ち、もう立派な芸術だ。

   もともとデザイン・フェスタは、デザインというよりアート・フェスタに近い。私などには、ほとんど理解不可能な、脳味噌型の財布だの、鼻を垂らした人形だの、エロ・グロ・ナンセンス系の作品も多い。その中で、ゆうさんの作品に顕れる感性は、あたたかな人柄がにじみでていて、とても好きだ。

   さて、自分でいうのも変だが、私は大の恥ずかしがり屋。それを隠すために、私はよく冗談を言う(冗談しか言わないとも言われる)。
そこで、大正大学のK教授(弘法大師の研究者というより信者に近い)に聞いた。

「先生!お聞きしたいことがあるんですが」
「なんだ?君か。嫌だな。君の質問はいつも変なのばかりだからな」
「まあ、そう言わずに。お釈迦さまや弘法大師は、冗談を言いましたかね?」
K先生は即答した。
「そりゃ、言ったと思うよ。文献には出てこないけどね。冗談を言うくらいの人間としての幅がなければ、あそこまで人はついて来なかっただろうな」

   私は右のげんこつで、左の手の平を叩いた。先生の前ではさすがに「ヤッター!」とは叫べなかった。
   思慮不足のために(いや、きっと人柄が悪いのだ。だから坊さんとして修行しているのだ)、私の冗談はよく人を傷つける。お釈迦さまや弘法大師の冗談は、人の心をあたたかく、なごませたはずだ。

   ゆうさんの作品は、私にとってジョークはかくあるべしという見本だ。
→はやしゆうさんのホームページ

   次回は森さんからのリクエスト“供養は誰のため?”から。
小学生に「お坊さん、供養って何?」と聞かれた私のとった行動は……

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