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第67話  食べ物の好き嫌いと人の好き嫌い


挿し絵    和という漢字は、穀物を表す偏(のぎへん)と、食べることを意味するからできている。つまり、なごやかなのはご飯を食べてる時なのよ、と中国人は知っていた。だから、ご飯はなるべく家族そろって食べましょう!

   さて、人には食べ物の好き嫌いがある。親は子供に好き嫌いなく食べるよう育てる。栄養のバランスが取れて健康な身体を作るからだ。
「ニンジンも食べなさい。目にいいんだから!」
と言われて嫌々食べた人も多いだろう(実は、こういう育てられ方をした人に限ってサプリメントオタクになっているような気がしてならない。親が食べ物を食事でなく、栄養物として物を食べさせた弊害だと思うが、如何?)。
   そして、もうひとつは、食生活が豊かになり、ひいては人生が豊かになるからだろう。 福神漬けやラッキョウのおかげで、カレーライスがどれほどおいしくなるかはご承知のとおりである。

   一時期、不思議にも私の周囲に食べ物の好き嫌いが多い人が集まったことがあった。PTAの仲間である。
   食事中に「これ、嫌いだからあげる」「こんなの良く食べれるね」などとかしましいことこの上ない。でもそれはそれで、和やかではあった。
   しかし、ある時、ハッとした。食べ物の好き嫌いが激しい人は、ほとんど例外なく「私、人の好き嫌いは、ハッキリしてるんです」と公言して憚らない人でもあったのだ。 八方美人の優柔不断さに対して、人の好き嫌いがハッキリしていることで判断の明確さを自慢したいのだろうが、果たしてそれが自慢になるか疑問だ。
   親が子供に何でも食べなさいと言っている理由と同じで、いろいろな人と接していると、心の栄養バランスが取れるようになるだろうし、ひいては人生が豊かになるだろうと思う。 好きな物しか食べず、好きな人とか付き合わない……なんだかずいぶん狭い人生街道を歩いているような気がしてならないのだが……。

   街道で思い出した!次回は道つながりで「道(どう)がつくには……」。
   俳句の先生がしょんぼり言った「お花は華道、お茶は茶道なのに、俳句道って言わないのです」。そこから思ったことなどを、心赴くままにしたためまする。
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