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第68話  道がつくには……


挿し絵    今回は俳句の根本先生との会話からスタートです。

   根本さんはあちこちの会で200人くらいのお弟子さんがいる。私が昔通っていた喫茶店の常連さんの一人だった。
   ある時カウンターにいた私に、根本さんがコーヒーカップを手にして言った。
「お花は華道だし、お茶は茶道っていう。仏教も仏道って言うでしょう。でもね、私のやってる俳句は俳句道とも俳道ともいわないんですよ。なんだか悔しくってね……」
そんなことは考えたこともなかった私は「はあ。そういえばそうですね」と、例によってこれ以上話が続かないような受け方をした(この頃の私は今以上にツマラナイ奴で、お前と話していると会話が続かないとよく言われた)。
   根本さんは私の反応にめげることもなく、カップを置くと気を取り直したように、先週帰ってきたばかりだという先生たちの研修会の話をしてくれた。

   全国から400人の俳句の先生たちが、1泊2日の研修会に冬の新潟に集まった。初日に海岸へ出た。冬の新潟ならば、荒れる厳寒の日本海が定番。そこで参加者が2首ずつ詠んだ。翌日、提出された800首の句を詠んだ講師の先生は、研修会の壇上にあがって開口一番、語気を荒らげてこう言った。
「仮にも全国で先生と呼ばれている皆さんが、こんな句しか詠めないとは、私は情けない」と。
   聞くと、すべての句が荒れる冬の日本海を詠んでいたそうだ。ところがさすが講師の先生は違っていた。海を詠まずして日本海を想像させる句だったというのだ。
   「脱帽でしたよ」と根元さんは再びコーヒーに手をのばしながら言った。
   どんなものを見るにも、固定観念にこだわらず、しかし基本は押さえて、感性豊かに幅広いとらえ方をするということだろう。
   私はその話を聞いて、それなら立派な俳句道じゃないか思い、素直にそう伝えた。ある一つのことをやっていくうちに心が練れて、人生の歩み方が自然に身についてくる。それが○○道(どう)と呼ばれる。柔道、剣道、仏道に限らず、主婦道、OL道、学生道、大工道などいろいろ道があるはずだ。
   さて、私は仏道を歩いているんだろうか。

   ……分かりづらい終わり方ですみません。来週の「辿りついてみたら……」で、その舌足らずの部分を埋めます。
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