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第81話  南京玉簾的仏教


挿し絵  今回お題をいただいた都鳥さんは、ご詠歌を勉強している方です。
歌をうたいながら仏教の勉強ができるというスグレモノのご詠歌の中には、数字のつく仏教語がたくさん出てきます(二利にり四恩しおん六波羅蜜ろくはらみつ八正道はっしょうどうなどなど)。
そこで都鳥さんは思いました。
“この数字って何か意味があるんだろうか”と。

 さて、興味があって、デパートの手品用品売り場で南京玉簾を買ったのは、もう30年近く前のこと。玉簾を手渡す時に店員さんは大学生だった私に言った。
“米びつの米をこれでかき回すんだよ。そうするとヌカの油でよく滑るようになるからね”と。
おかげで、わが家のご飯は数週間にわたって、崩れた形のお米を食べるはめになったことがある。
 丸くしごかれた竹をたこ糸でつなげた束の南京玉簾は、演じ手の軽妙な歌とヘンテコリンなダンスに合わせて、二本の国旗や釣り竿に変化する。そして、変化した形を
♪お目にとまれば、元へとかえす♪
と歌いながら元の太めの竹ヒゴの束にもどす。

 本格的なお坊さんになって、久しぶりにこの玉簾を練習して気がついた。
“これって、仏教的だな……”
形は変化するのだが、それは収めていくとちゃんと元にもどるのである。
 たとえば煩悩の数といわれる108という数がある。これは、迷いの根源とされる三毒(むさぼり、いかり、おろかさ)を展開した数だろう。108は3でちゃんと割れる。この三毒も実は“無明むみょう”を三つに展開したものだ。
“智恵”と“慈悲”に変化したものは、元へ戻すと「仏の徳」という一つに収まる。父母を一つに戻すと親になるのと同じだ。

 都鳥さんがふと思った仏教語に数字が多いわけは、このように、元があって、それをより具体的な教えに変化させていった先人たちの努力の賜物だ。
布施(無条件で何かをさせてもらうこと)や精進(がんばる!)などの仏教の具体的な教えも、心安らかになるという大目標達成のための具体的な方法である。

 今回は仏教理解のための周縁についての話になってしまいました。でも、初めて聞いた“ナンキンタマスダレ(片仮名で書くとなおさら変だけど)”の響きの呪縛から逃れられないんです。ごめんなさい。

   さて、次回は呪縛つながりで“霊のしわざ”でいきます。
霊感商法の共通した矛盾した理論をご紹介します。だまされる前にご一読を!

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