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第82話  霊のしわざ(霊感商法の手口)


挿し絵  「私の友達がへんな宗教に入ってしまって……」と相談を受けることが年に何度もある。この場合の相談というのは、入信した本人を普通の世界に連れ戻したいというよりも、その友達のことをどう理解したらよいのかというものだ。
 そこで、霊感商法と呼ばれる詐欺まがいの手法の共通点をご紹介しておこうと思う。キーワードは“自分のご都合”だ。

 私たちは何か自分のご都合通りにならないことがおきると、そのツジツマ合わせがしたくなる。「どうしてこんなに太ってしまったのだろう……食べすぎで、運動不足のせいだ」「どうしてガンになったのだろう……環境ホルモンの影響である」などなど。このあたりで止まっていればいいのだが、それが“他でもない自分の身に、どうして”となった時がクセモノだ。
 「他の人はやせているのに、どうして自分は太ってしまうのだろう」
 「どうして私がガンにならなればいけないのか」
 わからないことを、わからない!としておく勇気と、それならば今何をすべきか、という発想と行動力が必要なのに、自我が絡んでくると尚更ツジツマを合わせたくなるのだ。  そこに登場するのが霊である。霊感商法では“あなたが太っているのは水子の祟りです”“ガンになったのは先祖の供養が足りないからです”となる。―――これでツジツマが合っちゃうのだ。
 しかし、冷静(仏教では禅定といいます)に考えていただきたい。霊感商法ではその導入として“ご都合通りにならないことだけ”を霊のしわざで説明するのだ。普通の起こっていることを霊のせいにはしない。朝食にパンを食べることを霊のせいにする人がいるだろうか。
“私はご飯が食べたかったのに……”という人にとっては、ご都合通りではないから、霊感商法で言えば“それはあなたの守護霊の力が弱っているから、パンになってしまったのです”となる。

 自分のご都合の裏返しとして“霊”をもちだしてはいないだろうか……そう思える心の強さを日頃から養っていたいものです。
 さて次回は、ご都合つながりで、ご都合通りになった時に言う言葉“チョー、ラッキー!”でいきます。若者の振りして薄っぺらな言葉を使いたくなる人(オレのこと?)、読んでみて!

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