ちょっといい話

第123話 いい・かげん

挿し絵  さて、今回は掛川市の“ひじき”さんからのリクエストのお題をそのままイッタダッキマ〜ス。

 今年大学に入った次男が小学校5年生の時のことだ。次男だから、親からかまわれなかった反動で無鉄砲なところもあるのだが、兄の失敗を見聞きしているおかげで慎重なところもある。特に、子供時代は、権威ある人からの指示はかなり厳守する傾向があった(私も次男なのでよくわかる)。
 さて、この次男が高熱で学校を休んだ。友だちの元気な登校姿を複雑な表情で見ながら、学校のそばのお医者さんへ私と行った。診察後、看護婦さんは次男に薬の袋をわたしながらやさしく言った。
「この袋の裏に、24時間時計のハンコを押したからね。これからお家に帰ったら、すぐ薬を飲んでね。そしたら、この時計で8時間後と16時間後に印をつけて、その時間がきたら、またお薬を飲んでね」
 次男は、一言も聞き漏らさじと真剣な表情で、看護婦さんという医療の権威者の指示を聞いていた。

 家に着いてすぐに彼は薬を飲んで、自分の部屋で寝た。そう、風邪には睡眠が一番だ。夕方になると、何やらドタドタと大急ぎで次男が階段をおりてきた。
“何だ?寝てたんじゃないのか?”とビックリ眼の父を横目に、台所へ駆け込むと、あわてて水道の蛇口を全開にしてコップに水を充たすと、薬を飲んだ。ほとんど息をしていなかったようで、飲み終わると大きくため息をついて「アブナカッタ……」と言った。
「どっ、どうしたんだ?」と私は尋ねた。
「薬の時間だったんだよ」
「えっ?だって、お前さっきまで寝てたじゃないか」
「だって、看護婦さんがこの時間にちゃんと薬を飲むように言ったんだモン。だからちゃんと起きられるように、目覚まし時計をかけておいたんだ。もうちょっとで遅れるところだったんだ。あぶなかったけど、間に合った」
 私は呆れて言った。
「そんなもん、お前。風邪には薬飲むより睡眠のほうがずっといいんだぞ」
「だって、看護婦さんが……」

 嗚呼ダメだ!テンポのいい会話文が多いと紙面がたりん!ここからが本題なのに。
 ――という訳で、皆さん、ごめんなさい。この「いい・かげん」の続きは次週でございます。題して“いい・加減”(ナンダ、漢字にしただけじゃないか……)。
ここから、台所にいた中学性の長男が参戦であります。