ちょっといい話

第131話 魔法のメガネでみえるもの

挿し絵  アメリカのテレビドラマ(たぶん“トワイライト・ゾーン”)の中に、次のようなギャッ!という一話があるらしい。

 ある男が道路でメガネを拾った。ところが、このメガネ、ただのメガネではなかった。なんと、ものごとの真の姿が見えてしまう魔法のメガネだったのだ。
男は、好奇心満々で、このメガネをかけて人々を見た。
 街を歩く絶世の美女が、メガネをとおしてみると、自信過剰で、わがままで、冷たい表情の、鼻がやたらと高い高慢な顔つきをしている。ぼんやりとベンチに座っているお年寄りを、メガネをかけて見てみると、純真無垢な天使の姿をしている、といった具合である。
 人は見かけによらないもの、姿と心は裏腹だと、最初は哲学的思考をしていた男も、次第に、自分だけが真実を知っているのだと、傲慢さが見え隠れしてくる。

 そんな時、彼は決して見てはいけないものを見てしまった。
ある夜、洗面台の鏡の前に立った彼は、そこで魔法のメガネをかけてしまったのだ。
そこに映った姿は、この世のものとは思えない、口が耳まで裂け、これ以上大きくならないほどひらいた目は赤く、悪魔のそれであり、世に言うところの身の毛もよだつ化け物の姿だった。
 彼はショックのあまり死んでしまった。ドタッ……

 ねっ、恐い話でしょ。
でも、もし、本当の姿が見えるメガネだったら、誰を見ても、虫でも、草木でも、み〜んな仏さまに見える筈なんです。仮に中途半端な魔法のメガネでも、一枚の紙を見たら、そこに木や雨や雲や太陽の光が見えないとおかしいんです。仏教者がこのドラマを作ったら、きっとそうなる筈だったと思います。

 さて次回は、みんな仏さまだとか、丸ごとOKだよ、なんて楽天的な仏教の考え方のカラクリの一端を“丸ごとOK”と題して進めていきます。ご自身の心の状態の確認になるかもよ。