ちょっといい話

第159話 草葉の陰

挿し絵 今回は“みみな”さんから質問、“人は死んだらどうなるの?”に沿って綴ってみます。みみなさんは中学生(だっけ?)、人生の疑問にたくさんぶつかる頃ですね。是非自分の心を耕せるような答えを見つけていってください。

 4年前のこと、父の7回忌(亡くなって6年目)の法事をした(父が住職をしていた寺は現在、兄が住職である)。久しぶりに親戚一同集まって賑やかな場になった。次男である私の奥さんは、私にとっては奥さんでも、他から言えば“次男の嫁”である。嫁の立場から、かなり気を使ってくれていた。精神的に二人ともけっこうクタクタになって夜、密蔵院へ戻った。お風呂に入り、さあ寝るかという時、私は家内に尋ねてみた。

 「ねえ、うちのおやじ、今はどういう所に住んでいるかなあ?」
 「きっとお寺みたいな所よ」
 「ふーん。亡くなった時は草葉の陰にいたけど、今はもうちゃんとした家に住んでるのか……」
 「そうね。草葉の陰じゃないでしょうね」
 「そっか。その家には庭があるかな」
 「あるわよ」と確信めいて答える。
 「そうすると、おやじはその庭を歩いたりするかな?」
 「そりゃ、するでしょ」
 「その時、何を履いて歩くかな?」
 「やっぱり、ぞうりじゃないかしら」
 「じゃあさ、そのぞうりの鼻緒が切れた時、その近所になおしてくれるお店あるのかな?」
 「……知らないわよ。そんなことまで」とムッとして続けた。
 「さっきから、あなたばかり質問してるけど、じゃ、あなたは、お父さんは今頃どこにいると思うのよ!」
 「……知らない」
 「何、それ!ずるいわねえ」
 「でも、お前、スゴイよ」
 「何がよ!今頃ほめたって遅いわよ」と怒っている。
 「だって、おやじがいる場所をそこまで具体的にイメージできるんだろ?それってとてもいいことだと思うんだ」
 「何をごまかしてるの?あなた、お坊さんでしょ。あなたはどう思ってるのよ!」

 ―――うーん、女房を怒らせたままで終わっては気分が悪いが、手に汗握るこの夫婦の言い合いの続きは次回“元いた場所”で。お楽しみに!(……楽しくないわよ!ってか?)