ちょっといい話

第163話 霊感商法の手口

挿し絵 自分にとっての不都合の原因が思いつかない時、新聞折り込みの霊感商法のチラシ。
「霊の障りは実在するのです。手遅れにならないうち早めの因縁鑑定を。鑑定料一件3,000円の安心料金」――もしやと思って電話をしてみる。概要を話すと「経験から申し上げると、霊の因縁の可能性が高いですね。でも大丈夫。しっかり供養すれば、その障りはなくなりますから。一度おいでください」

 鑑定所のドアを叩くと、待合室で家族構成、生年月日、菩提寺の有無など、後で脅かすための材料を記入させられます。ほかにも待っている人(サクラの場合もあります)がいることもあります。
「お宅もなにか悩み事ですか」
「ええ、じつは……」。
 部屋へ通されると「色々お困りでしょうね」と優しい言葉。
 続いて「まあ、とにかくお座りください。まずあなたの周囲の霊をみてみますから」と瞑想するフリ。で目をあけて「こういうことでいらっしゃったのですね」。ズバリ的中!当たり前です。待合室に隠しマイクがあったのですから。

 でも、当人はビックリします。どうしてわかるのだろう。この人はスゴイ霊媒師なのかもしれないと思う所で
「わかりました。あなたの不幸の原因は先祖の霊によるものです。」
「でも、両親の供養はちゃんとお寺でやってもらっています」
――こういう場合には
「3代以上前に行方不明になってそのまま亡くなった方がいます」
「そんなの聞いてませんが」
「行方不明になったので世間体が悪いから子孫に伝えられていないのでしょう」

相手はプロの詐欺師です、どんな場合にも手を変え、品を変えて、因縁を武器に脅してきます。

「どうすればいいですか」
「まずご供養しましょう。供養料は一霊につき5万円です」
「一霊につき?」
「ええ、あなたの場合、今の不幸は父方の行方不明の霊ですが、母方にもそういう方がいて、心やさしいあなたに気づいてもらって供養してもらおうとしています。だから二霊ですね」
 さすがに合計10万のお金は持ち歩きませんから、次回予約。
ここで、家に帰った時に、大勢の人に相談ができれば、「なんか怪しいから止めたほうがいい。菩提寺の住職に相談したほうがいいよ」と知恵が働きますが、独り暮らしだとなかなか相談できません。家族と同居していても、相談する相手がいなければ独り暮らしと同じです。

 2度目に10万円を持ってでかけて、供養してもらってやれやれと思うと
「まだ私が感じることのできない霊がいるといけないので、お位牌を作って供養したほうがいいですよ。今後こういう不幸がおきないようにするためにも、オススメです。お位牌は魂入れの供養料を含めて一体10万円です。父方、母方の両方を作ったほうが安心できますね」
――このように、一つお金解決すると、次の脅しの道具を用意しています。くれぐれもだまされないようにご注意ください。

※独り暮らしのお年寄りがいたら、プリントして差し上げてください。

 次回は、“トドのつまり”と題して、このまとめをしてみます。霊感商法にだまされないとしても、今自分が抱えている禍(わざわい)をどう解決するか――。