ちょっといい話

第187話 人生を○(まる)洗い

挿し絵 何と、垢抜けた、大雑把で、底抜けに気持ちのいいタイトルではありませんか。

 人生を○(まる)洗い!


 この言葉が私宛のメールボックスに送られてきたのは9月25日、月曜日の午後のこと。一瞬唖然として、そのあと、腹を抱えて2〜3分笑っていました。

 ことの発端は去年の暮れのこと……
Tさんという方から電話が入りました。
「本を書きませんか?」
「へっ?何のことですか?」
「あなたの文章はいろいろな所で拝見しているんですが、是非本を出したほうがいいと思うんです」
「それって、体(てい)のいい自費出版の話じゃないんですか?できあがったら私が何千冊も買い取らなきゃいけないとか……」
「違います。出版社が責任をもって作って販売しますから」

 実際にTさんとお会いすると、もと婦人画報社にいらした偉い方。編集のプロ。私も書店で見かけたことがある女性雑誌『25ans(ヴァン・サン・カン)』などの編集長を務められた方で、現在も出版プロデューサーで大活躍の方。Tさんの無謀な私の本の出版の意図はこうです。

―――団塊の世代が社会的な問題になっている。日本の繁栄を支えてきた、企業戦士の団塊の世代……。昭和22年から24年の3年間に生まれた世代約800万人がここ3年で定年を迎える。ある意味で会社と家庭の間で不器用に生きてきた世代に、般若心経の教えから、人生の第二ステージへの提言、人生の荷物の整理の仕方という形で書いてほしい―――。

 その話を聞いて、さすがに目のつけどころが違うと思いました。出版社も仏教関係ではなく、(株)経済界。日々の暮らしの中で仏教的なものの見方をするかなり異色の般若心経関係の本になるはずです。
 ネットではなく、全国の書店で、私がここに書いてきたような内容をお伝えすることができる!この提案を受けない手はありません。
 以来今年に入って、本の執筆という七転八倒の苦しみと楽しみが続きました。ところが肝心のタイトルが決まっていませんでした。9月22日の時点で「“人生荷物の整理の仕方――般若心経に学ぶ――”という路線でいきますが、25日に正式に決めましょう。でないと本のカバーも間に合わなくなりますから」という話だったのです。
 私はてっきり『人生荷物……』でいくのかと思っていたら、冒頭のメール!
 団塊の世代をターゲットにするだけでなく、広く誰にでも人生を丸ごと洗濯してもらえる内容をと考えて書き、編集してきた私にとって、こんなに嬉しいことはありません。

 その本が来週水曜日(10月25日)頃、出版です。ご笑読くだされば幸いです。今回は私にとっての「ちょっといい話」になっちゃいましたね、ゴメンナサイ。
 さて、次回は私の誕生月にちなんで“命の日”でいきます。かなり幅が広がる話題とあいなります。お覚悟の程を。