ちょっといい話

第197話 心の病気と気持ち

挿し絵 「もうそろそろダメかもしんないな……」

 肝臓ガンだった父は自分の体調がすぐれないと、すぐにこんなセリフを私に言った。何度も言われる方は、たまったものではない。
 「“もう死んじゃうかもしれない”って言われたって、どうしようもないよ。自分で体調管理してよ」と冷たく言い放ったことも一度や二度ではない。
 そんな父は色紙にこう書いた。

  “死ぬ、死ぬと言いつつ生きる お年寄り”

  “死ぬ、死ぬと云う人に限り長生きと だから私は死ぬ死ぬという”

 父は自分でも、どうしようも無かったのだと思う。だから、それを自ら茶化して文字にしたのだ。
 「病(やまい)は気からって言うんだからさ。もっと前向きになりなよ。自分で自分を病気にしてるように見えるよ。心の病気かもしれないよ」
 私がそう言った時、父はすぐにこう答えた。
 「確かに病は気からとは言うけどな。お前は大した病気になったことがないからそう言うんだよ。いいか、“気は病(やまい)から”ということもあるんだぞ。病気が気持ちを弱くさせることがあるんだよ」
 私は、気持ちさえしっかりしていればどうにかなるという精神論のみを、父に押しつけていたことを恥ずかしく思った。“気は病から”――そういうことがあると思えた。

 私は医師ではないし、大病をしたこともないので病気が人の気持ちにどんな影響を与えるかよくわからない。
 しかし、どんな時でもなるべく前向きにいようと思う。そのための訓練(修行)を元気な今からしておこうと思うのだ。自然をよく観察し、人の情けを実感できる心の体質を今から磨いておこうと思う。

 より具体的な方法は、故・村上正行さん(元ニッポン放送アナウンサー)が教えてくれた。
 「ちょっといい話」でも何度もご紹介している方だ。2001年11月から3年半、密蔵院で毎月一回開催されていた「村上正行さんの話の寺子屋」という会の内容を、自費出版で一冊の本にまとめた。『村上正行さん語録』である。
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 さて、次回は“都鳥”さんからのお題“三日坊主”でいきましょう。新年の抱負は何にしますか?せっかくの目標も三日坊主になりゃしませんか?それにしても、三日坊主の語源って何だろう……。