ちょっといい話

第199話 いい加減にしてください!

挿し絵 今年のお正月も面白かった――と言うと不遜かもしれませんけど。
 お墓参りに来た檀家さんのうち5人に聞かれたのです。
「お正月は7日まではお墓参りはしてはいけないと聞いたんですけど、そうなんですか?」
「誰がそんなこと言ったんですか?」と聞き返す必要はもはやなく、ただニンマリするばかり(だって、一昨年も「お墓にお水をかけてお参りしてはいけないんですか?」とずいぶん聞かれて、楽しく対応してたもんですから)。

 そりゃ、今まで人が何気なくやってきたことを否定すれば、それも一方で恐怖霊や厄などの言葉を持ち出す人がそんなことを言えば、一般の人にとってショッキングです。
 で、聞き返しました。
“どうしてダメだと言ってましたか。”
 答えはこうでした。
“なんでも、お正月は日本の神さまを迎える儀式だから、死んだ人の所へは行ってはいけない。日本の神さまは死を忌(い)み嫌(きら)うからだそうです。”
 ニャルホド……。喪中の人は神社の鳥居はくぐれませんわなあ。

 しかし、日本の神というのは、八百万(やおよろず)いらっしゃる。密蔵院でも神さま(鎮守さまや、大黒さま、地元の神さまである鹿島明神など)をちゃんと拝みます。その神々の中にドッカーンといるのは、ご先祖という神さまです。
 日本では、私たちが死ぬと魂はまず“草葉の陰に宿る”。そして、その魂が軒の下に移り、時間をかけて地元の鎮守の森へ、さらに子孫のもてなし(供養)を受けて、魂が浄化されて、やがて山(私たちにとっての水、木、食べ物などを供給してくれる命の源)に帰る。そして、親しい先祖(神)となって子孫を見まもる。――これが、私たち日本人が持っている代表的な霊魂観念の一つです。ですから、神さまは、私たちのご先祖さまでもあるのです。その先祖を迎える儀式が、正月とお盆です。
先祖の墓参りをして“どうぞ、見まもってください”と祈ることは、日本人にとって、ごく自然なことなんです。

 お墓参りには、何の気兼ねも遠慮もいりません。
 どうぞ、いつでもお墓参りをしてください。先祖に感謝の思いを伝えてください。
 視聴率だけが目的のテレビのショーに出て、人心を惑わすような人の言葉は、“何故?”という批判的な目と耳でご覧ください。自分で決めていくという主体性がなくなってしまいますよーん。そして、もしどうしても気になるようなことがあれば、遠慮なくお寺へ聞きに行って真偽を確かめるといいです。

 さて、次回はいよいよラスト。あふるる思いを、まとめられるか、られないか……。タイトルはそのものズバリ!“仏教”でいきます。