佐藤俊明のちょっといい話

第45話 縦横二つの人間関係

縦横二つの人間関係  挿絵

 お盆の日には寺々で施食法要がよく行われる。お盆は父母先祖に対する孝順供養を教えるものであり、施食会は無縁の精霊まで供養する慈悲行の大切なことを教えるものである。
 私たちは、父母先祖という縦の人間関係と社会連帯という横の人間関係を持っており、この二つの関係を強化してこそ真に充実した生命力が養われるのである。

 日本では従来、縦の人間関係を重んずる社会構造だったが、戦後それが封建的だと批判されるようになり、それに伴って民族の伝承や家庭生活の中に培われてきた美しい伝統と活力が失われてきた。しかし、ここで忘れてならぬことは先祖あっての私だということである。

 切り花はどんなに美しくても根がないのですぐに枯れてしまう。
 美しい生命の花をいつまでも咲かせておくには根を大切にしなければならない。先祖に対する供養を忘れるような人は根なし草の一生に終わることであろう。

 戦後の社会は従来の縦横に代わって社会連帯という横軸が強調されているが伝統がないだけになんとなく付け焼き刃の感じがする。
 権利、義務といったこの世だけの相互関係だけではなく、これまで培われてきた無縁の精霊にまで供養する奥床しさ心のベースにおかなくては真に連帯感のある社会は築かれないであろう。

 お盆の月は、縦横二つの人間の関係を見詰めさせる修養月間である。
 縦横二つの軸に生かされている自分を見つめ、真に望ましい人生を生きる活力を養いたいものだ。

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