佐藤俊明のちょっといい話

第46話 達磨忌

達磨忌  挿絵

 10月5日は達磨忌、達磨大師の命日である。
 ダルマ様はインドの香至国の第3王子として生まれ、出家して般若多羅尊者の弟子となり、第28代目の祖師に列せられ、晩年、3年の歳月を費して中国に渡来された。
 交通不便の頃、しかも老齢の身をもって未知の国に向かったその勇猛心は、身命を惜しむ凡人には思いも及ばないことで、これは、ただひたすらに真実の仏法を伝え、迷える衆生を救おうという大慈悲心から生まれた尊い仏行である。

 西暦520年9月21日、達磨大師が広州府に着いたことを伝え聞いた梁の武帝は、達磨大師を金陵の都、今の南京に招いて、
「朕はこれまで寺を建てたり、写経したり、僧尼に供養してきたが、どんな功徳があるか」
と、たずねた。
 達磨大師は味もそっけもなく
「無功徳!」
と答えて、色よい返事を期待していた武帝をすっかり失望させた。
 迷える衆生を救おうという誓願一筋に生きた達磨大師には、妥協や迎合はみじんもなかった。

 達磨大師は、ご利益目当てに仏法を求めるような者など相手にして時を空費してはならぬとばかり、揚子江を渡って魏の国に赴き、嵩山の少林寺で坐禅三昧に入るのだが、さいわい素晴らしい後継者に恵まれたため、中国に禅が栄え、それがわが国に将来されたのである。
 それで、禅宗の寺々では、毎年10月5日を達磨忌と称して、ねんごろに報恩の法要とつとめるのである。

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