佐藤俊明のちょっといい話

第76話 羊頭狗肉

羊頭狗肉 挿絵

 今年は未年。(※注)
 未は動物でいえば羊。羊というと「羊頭を揚げて狗肉を売る」という言葉を思い出す。
 羊頭を揚げて狗肉を売る悪徳商法は昔も今も変わりない。
 特に今日は舶来一流ブランド商品のニセモノが横行している。
 昨年、昭和天皇在位六十年記念金貨のニセモノが大量に出まわって話題を呼んだが、どうなったものかその後さっぱり報道されないのも変な話だ。

 このごろのニセモノは一流デパートや専門店でも騙されるというのだからニセモノはそれだけ精巧にできているわけだ。
 或る外人記者が、

「金持ち日本人は一流品に食傷して、ついにニセモノの一流品を愛する心境に達したんじゃないんでしょうか。いうなればZENの心境」

などと皮肉ったということだが、一流品(羊頭)のニセモノ(狗肉)ではなく、「ニセモノの一流品」といったように狗肉の上等なものは羊肉に近接し、しかも格安となると、羊頭つまり一流ブランド商品の在り方が問題となってくる。
 これは私どもが“仏教”という老舗で一流ブランドを売り物にしているだけに考えさせられる問題である。

 盤山和尚は街を歩いていて、肉を買おうとした客と肉屋の主人との問答を立ち聞きして悟った。

「ごく上等のところを一斤くれ」

「旦那、うちの店のどこによくない肉があるといわっしゃるんですかい」
(うちの店の肉はみな上等のものばかりですわい)

必要なのはこの意気、この力量、そして精進。

 ※注 このお話は、1991年に書かれたものです。

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