佐藤俊明のちょっといい話

第77話 天上天下唯我独尊

天上天下唯我独尊 挿絵

 4月8日、ルンビニーの花園でお生まれになったお釈迦さまは、そのまま四方に7歩歩いて、右手を上に、左手を下にのばして、

   天上天下 唯我独尊
   (天が上、天が下、我こそ最も尊きものなり)

と、さわやかに宣言されました。

 人間がこの世に生まれいずることは、いや、人間に限らず、動物であろうと植物であろうと、生まれいずるということは、万物一体の生命の根源が縁によって男となり女となり、花は紅、柳は緑にと千様万態の姿となってあらわれ出ることであります。

 従って、生まれいずるときのオギャーという産声は、おだやおろそかなものではありません。
 それはあたかも、夏の夜空を美しく彩る花火が、本体から飛び出す瞬間の轟音にも似たものではないでしょうか。
「天上天下 唯我独尊」の一語は正に仏陀釈尊の第一声としてまことにふさわしい大獅子吼であります。

 4月8日になると寺々では花御堂を飾りお誕生仏に甘茶をそそぎかけます。
 これはお釈迦さまがお生まれになったとき、天から美しい音楽とともに無数の花びらが舞い落ち、龍王が口から甘露の雨をそそいで産湯としたという故事によるものであります。

 誕生仏に甘茶をかけ、お釈迦さま誕生を祝うとともに、私どもお互いの心にこびりついている欲垢煩悩の汚れを洗い清め、持って生まれた無垢清浄の心の光をみがき出し、心に美しい花を咲かせたいものであります。

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