佐藤俊明のちょっといい話

第88話 6/7の功徳

6/7の功徳 挿絵

 今年は午歳(※注)、十二支でいえば第七位、月に配すると五月、時刻では正午、方位では真南、五行では火、動物では馬ということでこの配分のすがたをみると、元気いっぱいの様が連想される。
 今年は元気はつらつの年でありたいものです。

 さて、馬と人間のつきあいは長く、馬にまつわるいろんな話があるが、今回は「人間万事塞翁が馬」について述べよう。

 昔、中国の北方の塞に住む老人の馬がある日越境して胡の国に逃げてしまった。
 近所に人たちが見舞いにゆくと、老人は、

「そのうちいいことありますよ」

といって、少しも気にする様子がなかった。
 しばらくすると逃げた牡馬がすばらしい牝馬をともを伴って帰って来た。
 周囲の人々がお祝いの言葉を述べると、その老人は

「わるいことがなければいいが」

といって、浮かぬ顔をしている。

 両馬の間にりっぱな仔馬が生まれた。
老人の息子はそれを育てあげたが、ある日落馬して脚を折ってしまった。

近所の人が見舞うと老人は、

「そのうちいいことがあるさ」

といって笑っていた。

 時が経って、胡の国が攻めて来たので若者は戦争に駆り出され、十中八、九は戦死したが、脚を折ったため老人の息子は無事だった。

「吉凶禍福はあざなえる縄の如し」

といわれるが、周囲の動きに一喜一憂することなく長い物差しで人生を達観したいものである。

※注 このお話は、平成2年に書かれたものです。

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