佐藤俊明のちょっといい話

第95話 お彼岸

お彼岸 挿絵

「暑さ寒さも彼岸まで」といいまして、たいへんしのぎよい季節となりました。※注
こういうと彼岸とは季節の代名詞であるかのようにひびきますが、そうではありません。

 こよみをみると、

「緑の週間」
「愛鳥週間」
「××週間」
「○○週間」

と実に多くの週間が設けられてますが、彼岸はそのはしりで、聖徳太子の頃からはじまった修行週間であります。
 修行は毎日欠かすことのできない大事なことですが、お互い生活に追われているのでなかなか思うにまかせません。
そこでせめて年二回、春秋のもっともよい季節に集約的におこない、修行の意義を忘れないように、と設けられたのが彼岸であります。

 彼岸とは読んで字の如く、向こう岸のことであります。仏教では、こちら岸、此岸から彼岸に渡るべく努力することを教えるのであります。
 彼岸に渡るには、布施・持戒・忍辱・精進・禅定・智慧の六つの徳目を実践しなくてはなりません。
これを六波羅蜜といいます。
 亡くなった人をあの世に送るとき、六文銭を持たせてやりますが、これは三途の河の渡し賃だといわれます。
三途の河とは貧・瞋・痴という心の三毒のことであり、六文銭は六波羅蜜のことであります。
心の三毒を六波羅蜜で乗り切ってはじめて彼岸に到達できるのであります。
 亡くなってから仏になるのでは遅いのであって、生きてるうちに心の三毒を制して彼岸に悟ることが大切であります。

※ このお話は、昭和63年3月頃に書かれたお話です。

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