佐藤俊明のちょっといい話

第99話 因果応報

因果応報 挿絵

 競馬に障害競争があるという。
塀を越える際、3メートルの塀を越えるのに4メートル飛んだのではそれだけ遅くなる。
 3メートルなら3メートルぎりぎりになるべく低く飛んでうしろ足のひづめの半分が塀のへりにしっかりつく、そのようにとぶのでないと優秀な競走馬にはなれないという。
 そこで塀のへりにひづめの半分を載せた時、その足がぐらつかないようにしなければならず、そこが訓練の急所なのだそうだが、塀のへりの土が比較的しめっている場合に得意な馬と反対に乾いた土に強い馬との区別が出てくるそうで、つまり天気の日に強い馬と雨の日に強い馬との別があり、それは単に訓練によってのみ養われるのではなく、その性質は4代くらいまでさかのぼるという。
 ここに競走馬の血統が重んじられるゆえんがあるわけだが、同時に現在の一瞬に因果関係が実によくあらわれている。

 即ち過去の因によって生じた現在の果はそのまま未来に果を生ずる因である。
因は果を生じ、果は因により因果の道理は応然としてくらますことができず、相前後しながら現在の一瞬に摂せられている。
 だから手の舞い、足の踏むところ、すべては因果の律動そのものである。
現にあらわれない心の動きといえども因果の理性を脱することはできない。
 したがって善因には善果があり、悪因には悪果あり、その果は同時に因として果を招くこと応然として明白、これは何人の力をもってしても動かすことはできないのである。

前の法話
佐藤俊明のちょっといい話 法話一覧に戻る
法話図書館トップに戻る