菅野秀浩のちょっといい話

第10話 知識と智恵[慧] Ⅱ

知識と智恵[慧] Ⅱ 挿絵

 最近、車に同乗させていただくと、必ずカーナビゲーションシステム(カーナビ)が設置されていて、どんなに遠くても、かなりの小路も的確に情報が与えられて、誠に便利なものができたものだと驚かざるを得ない。
しかし、何度か乗り合わせているうちに、おやおやと思うことも間々ある。

 やっと目的地の周辺にたどり着くと、非情にも道案内を突然に打ち切られ、結局そばまで来て、迷って予定時間に着かないなんて、笑えない話もあるし、勝手に運転者が自分の知ってる道を行こうものなら、再三に際しその補正に努め、しきりに是正を求める。

 このこと、知識と知恵を説明するのに持ってこいの譬えである。

 まさしくカーナビの道案内が知識で、自分自身の経験と感を頼りに、的確な判断で目的地へたどり着くことが智恵である。

 確実に地理を熟知したマニュアルがあっても、工事や事故のアクシデントに巻き込まれたり、途端にその道路が使用不可能になれば停車せざるを得ない。

 一方、自分の体験に任せる方は、臨機応変に判断して、難なく目的地へたどり着く。

 小学校へも入学しない幼児が、親と別々に目的地に向かい、早く到着する場合がある。親の常識より、子供の遊び慣れた智恵が、庭を横切り、垣根破れを潜って早さで勝つ。

 知識は多いほど、気持ちが豊かになれる。

しかし、毎日の生活や行動は知恵なのである。

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