菅野秀浩のちょっといい話

第14話 互助Ⅲ 香奠

互助Ⅲ 香奠 挿絵

 お葬式になると必ず、お悔やみの印として「香奠=典(こうでん)」を、先様に持参することになるが、今日では香奠の意味も目的も理解しない方が多いと思う。

 香奠は、もともとインドにおいては、遺体の腐臭を消すために、香木を焚きこめることが転じて、「良い香りを供える」「香しい匂いを供えるしきたり」になり、清らかな香を供える資に変じた物であろうと思われる。

だから香奠の本義は、お葬式に係る費用の相互の負担であり、緊急の一人では賄えない扶けとして供えられるものなのである。

 以前はどこの家でも「香奠帖」を管理して、知人にご不幸があれば、先ず香奠帖を開いて確認し、戴いた相手ならば必ずお悔やみに参上し、香奠をお届けした。また香奠帖に記載がなければ、知人でも告別式のみにお邪魔し、焼香だけでお悔やみを済ませた。

 昨今は、お悔やみに伺う方が全てお香奠を持参するのが当たり前で、家族がそれぞれお香奠を持って行く場合も間々ある程で、焼香もしない他人の香資を預かり、返品のお茶を3個も5個も下げて帰る人もいる。

 だから、やれ通夜・葬儀・四十九日忌までは「御霊前」で、それ以降は「御仏前」などと、真顔で説明する人もでてくる。

 ちなみに「御香奠」が正しく、「御香資」「御芳資」と書くも良い。

 急な物入りを扶けあう、先人の素晴らしい相互互助の智恵が「香奠」なのである。

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