菅野秀浩のちょっといい話

第16話 互助Ⅴ 布施 ロ

互助Ⅴ 布施 ロ 挿絵

 NHKの番組クローズアップ現代で、「戒名料」を取り上げたプロデューサーが、番組俎上は戒名料は宗教の現代問題なのだといい、ある評論家は消費者問題だと言及した。

 これは端的に、今の仏教事情を言い表していて、宗教そのものが現代問題なのだから、言い訳のしようもない。戒名の仏教教義は別にしても、寺側にも責任はあるが、寺と信徒の相互関係も十分に理解し認識してほしい。

 日本における仏教主と信者の関係は、死者儀礼が確立して後、堂宇の回りに墓所を建立したため(逆もあろうか)、参詣の至便とお堂の管理面からも、檀家制度が発達し、寺と家という実に緊密な関係が芽生え、僧侶と信者という個々の信仰関係が薄れた。

 この家々と寺の関係の檀家制度は、保証された宗教の自由という、個人の基本的人権上では、甚だ人権無視の制度ではあるが、寺を経営するものにとっては、誠に都合の良い習慣となって今日に至っている。

 即ち、不特定の個々の布施(喜捨)によって成り立つ運営が、家という予めに約束された、特定の信者集団によって支えられているのだから、これほど強固な護持はないのである。

 これは先人の、物を共有し維持するための、労力や財の負担を軽く分配するという、卓越した知恵の結晶であろう。だから、分限の違いによって、公平にそれぞれが負担し、互いに扶け会う強固な護寺制度が確立した。

 ここに布施が、互助という根拠がある。

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