菅野秀浩のちょっといい話

第17話 互助Ⅵ 檀家

互助Ⅵ 檀家 挿絵

 先述(第16話 互助Ⅴ 布施)のとおり、日本仏教は寺の維持管理や堂宇の造立には、普請(ふしん:建設の仏教語で、広く寄進を集めてお堂等を造営すること)の語が示すように、檀家制度という特定の組織によって、その賄いや経費が集められ経営されてきた。

 このことは、より密接な寺檀の関係を確立し、自分たちの寺意識が芽生え、組織としての秩序や相互の役割も分担された。

 しかしその負担は、極めて民主的に平均に分割されたかといえば、そうではなく、合理的な分限による負担によって、自然になすがままの、極めて複雑多岐な、逆に極めて素朴で簡素な方式でなされた。町を維持する町会費の負担などにも、その習慣は残されている。

 これに対して寺側は、檀家という特定の信者の組織を大事に扱い、決して差別ではなく、個々にその分限による(これ又極めて複雑多岐な、逆に極めて素朴で簡素な)方式で、寺と檀家の関係を営んでいった。

 戒名等もそうで、本来各宗の教義に則った各々の意義はあるが、相互互助的発想からいえば、分限による温かい喜捨への、寺側からの御礼的な行為であり、「諡名(おくりな)」という所以である。

 だから、檀家外には戒名は授けないし、生前に戒名を授かった方は、檀家として登録され、菩提寺との約束がなされるのです。

 菩提寺を持たない家は、当然「相互互助」からは外れるのです。

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