菅野秀浩のちょっといい話

第24話 死後の決定権

死後の決定権 挿絵

 1992年、「サザエさん」で有名な漫画家長谷川町子さんが亡くなった時、個人の遺言で35日間公表を伏せたことが始めてのように記憶するが、その後有名な方では柴又の寅さんの渥美清さんが、1996年「死んだ顔を見せるな。家族で送り、骨にしてから公表しろ」と、世を去った。

 同じ年、名女優で、素敵な随筆家であった沢村貞子さんが、「葬式の自由をすすめる会(会長安田睦彦)」に入会、先亡の映画評論家のご主人大橋恭彦さんの遺骨を納骨せずに安置なされていて、共に自宅から望める神奈川県相模灘に散灰(自由葬)された。

 どなたも、大騒ぎせずに、自分らしく世を去りたい、私人としての矜持をお持ちで、清々しくて、とても人間性が感じられた。

 勿論、法的にも規制が無いわけで、法務省刑事局や厚生省も、節度や、国民の意識、宗教的感情の動向を見守る、コメントをした。

 しかし、宗教家の端くれには、何とも寂しく、事後を無心に託する、人間関係への甘え(全てを残されたものへ託す)があっても良いのでは無いのかと、忸怩たるものがあった。

 曾て、死後は託すもので、死んだ後のことまで、自分で決めることは無かった。

それでも、残された遺族は供養をし続け、33年後の回忌もきちんと勤めた。

 普段、他を思っていないと、思われなくていい、「自分の事は自分」なのだろうか。

 ファンあっての生業だから、一層感じた。

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