菅野秀浩のちょっといい話

第50話 仏教の主張

仏教の主張 挿絵

 『アメリカ同時多発テロについて』

「(略)テロは、自由と民主主義の敵であり、力を合わせてその再発を防止したいと願っておりますが、このたびのテロの根底にある宗教的信念が見え隠れしている報道に接し、問題の深さを感じます。私たち仏教徒は、釈尊の寛容さの精神と弘法大師のマンダラ思想を基本に置いて、異文化や他宗教と共存できる道を探り続けなければならないと、切に考えております。犠牲者各位のご冥福を祈り、同時にこれ以上の対立の拡大の無きことを願って止みません。」

 この文は、私の寺を包括する真言宗豊山派が、この度の震撼の大惨事が同時多発テロと表明された時点で、時を置かず代表名で発信したものである。

 短文だが、瞬時の対応としては、仏教者の見解と立場を明確にし、無益な対立を戒め、寛容な共存を強調する等、正鵠を得ている。

 「信ぜよ!信ずる者のみ救われる」は、イスラムもキリストも同じで、洗脳され、武器を持ち高声に批判し罵る少年の姿も、敵を憎悪し報復を煽る者も同じ次元で、宗教指導者に対する、震える程の怒りを覚える。

 釈尊の神話の神をもたぬ仏教は、「まず明らかに見よう、そして真実の道を進もう」と、まず考えること、正しく見る事を主張され、盲信や狂信を戒め、自我の滅却による対立を無くす、平和と自由への道を示された。

 又弘法大師は、全てを融合し包括する共存のマンダラ思想を主張され、平和を希った。

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