菅野秀浩のちょっといい話

第53話 黒白二鼠の譬えⅡ

黒白二鼠の譬えⅡ 挿絵

 前回「白黒二鼠の譬え」の解説を加えたい。

先ず茫々とした荒野は、「人生の荒波」。

巨像は「不可抗力な自然の力」。

迷える旅人は「凡夫(人間)」、井戸穴は「安住の場所、幸せな家庭生活」。

藤蔓は「生命の糸(余命)」、大蛇は「死の影の接近」。

四匹の毒蛇は「肉体の病苦」、白黒の鼠は「昼夜の時」。

 そして最後の甘い蜜の滴りは、いついかなる時も訪れる「人間の五欲(煩悩)」。

 この譬え話は、我々凡夫の真の姿を言い当てていて楽しい。

 荒野のような人生の荒波を、命を賭して生き抜くが、巨像のような自然の力や不可抗力が突然襲い、あわてて逃れたりする。

 逃れた家庭という安住の地に居て、安らぎを求めていれば幸せはある。だが安住は続かない。必ず命には限りがあり、どんな者にも平等に、病や老い、死の恐怖は訪れる。

刻々と時は過ぎ、今日という日は帰らない。

 瞬時も無駄にできない時と、避けられない苦しみがあるのに、暢気に今を過ごしている。

 どんな謹厳実直な方も、一度煩悩の風が吹けば、もろく崩れ、我を忘れて欲望に身を任せてしまうものなのだ。

 人間なんてこんなにも脆い。さまざまな欲望ほど、身を滅ぼすものはない。心して身と生活を律しなさい。という、譬え話です。

 「煩悩(欲望)の風」に逆らい、身を修め、自己を律する、何事にも動じない安心が、釈尊の開かれた『仏教』の教えです。

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